愛・地球博 前編

9月6日深夜2:00。愛知県は名古屋へ向けて走り出した。おりしも台風が富山県を通過しようかどうかというしかも丑三つ時に、車に荷物を積み込む姿は若干・・・。
今回のメンバーは3人。SP−Dプラス我が愚弟のヤッさん。ムサくるしいことこの上なし。
まるで道を知らないワタクシ、端っからナビ頼りで出発したのだが、このナビってやつがなかなかの曲者で、当然ながらその時々の気象状況及び道路状況を考慮に入れることなく道順を叩き出してくる。いや、ひょっとして最近のモノならそのくらいのことはやってくれるのかもしらんが、なんせワタクシのカーナビは平成10年式、しかもCDナビという代物。無条件で信用するにはいささか頼りない。
と、いうものの相方は寝てるし、ナビのやつは自信満々に右、左と指図してくるしで、結局言いなりのまま156号線で五箇山を抜けて行くルートに乗る。
この道はひょっとして細くて危ないから行かない方がいいって相方が言ってた道だろうか?
強くなってきた風に不安が過ぎるも、ここまで来たら行くしかないのです。しばらくして
相方がモソモソと起き出す気配。続いて声。「ああ、こっち・・・ でももうここまで来たら行かんとしょうがないなあ・・・」
不安げなその声を聞いて俺の中の不安もムクムクと肥大する。先ほどより風が強くなってきた。舞い散る夥しい木の葉。二者択一を迫られるとほぼ100%の確立で最悪の方をチョイスしてしまう人間も世の中には少なからずいるのです。そう、俺のように。カンベンしておくれ。旅は道連れ世は情け。死なばもろともなのです。

ほどなく延々と曲がりくねる山道に入る。風はもう暴風と呼んでいいほどに荒れ狂っている。木の葉どころか木の枝までもが我が愛車めがけてばんばん降ってくる。恐ろしい。汗まみれの手でハンドルを握る。さきほどから頭の後ろでささやき声が聞こえてくる。
「何してんだ俺? 何してんだ俺?」
道には無数の障害物が落ちていて、そのほとんどが強風にもぎ取られた結構な太さの枝だったりするもんだから大変だ。下手をするとパンクしかねない。この暴風雨の中でタイヤ交換など死んでもゴメンだ。そして何よりも恐ろしいのがトラック。10tクラスのトラックが、見通しも悪くしかも道幅の細くなったカーブで当たり前のように追越をかけてくる。思わずブレーキを踏んでやり過ごす。自分の車のメーターを見ると時速80キロ。なのにトラックのテールランプはみるみる小さくなってゆく。一体何キロで走ってんだ? 完全に狂っているとしか思えない。
風と数台のトラックに煽られながら2時間弱のドライビング。精魂使い果たし相方と交代した。

目覚めたのは相方が道の駅に車を乗り入れた頃だった。空はもう随分明るくなってきていた。今回のライブ会場である笹島サテライト会場まではあと数時間とのこと。ここでいったん車を停めて仮眠・・・ のはずが、吹き荒れる暴風雨に眠れない。車が大きく傾ぐほどの風と叩きつけるような雨の音に、流石のヤッさんもヌルッと起き上がり不安げに窓の外を眺めていた。が、意を決したように外へ飛び出して行き、そして全身びしょ濡れで戻ってきた。どうやらトイレへ行きたかったようだ。風に弄ばれた挙句に顔に張り付いた、ただ伸ばしただけの長髪がムサ苦しいことこの上ない。

数時間後。眠ったのか眠らなかったのか、ぼんやりとした頭を抱えて再び出発。そのころには暴風域の影響下から抜け出していて、嘘のような晴天。順当に行けば会場には正午前に到着する。事前に聞いていた入り時間は夕方5時なので、結構な自由時間ができる。一同ちょっとした観光気分に火がつく。

予定通りに会場へは正午ちょうどに到着した。場所はJR名古屋駅からあおなみ線で一駅の笹島ライブ駅のまん前にある。なんと笹島ライブ駅である。しかも表記を見ると『笹島Raibu駅』ローマ字だ。スゴイ。